先日、認知症の方の名義になっている住宅を売却することができるかどうか、というご相談がありました。
少し前のニュースになりますが、認知症の方が所有する住宅が全国で推計221万戸を超える、との記事が出ていました。
認知症で意思表示ができなくなると、住宅を売却したいと思っても売買契約を締結することが難しくなってしまいます。上記の数は今後さらに増えていく見込みで、2040年には280万戸まで増える、とのことです。
成年後見制度を利用することで、家庭裁判所の許可を求めつつ、住宅の売買契約ができる可能性があります。
当NPO法人でも、不動産はあるが現金が少ないため、ご自身の医療費や施設使用料の支払いができない場合などに、後見人等として住宅などの不動産の売却を行うことがあります。
現金化する必要があること、本人が自宅に戻ることがないこと、売買代金が適正であることなど、家庭裁判所に住宅売却の必要性を説明して、許可が得られた場合に売却することができます。
なお、該当記事(朝日新聞)は下の通りです。
認知症の人所有の住宅、200万戸超と試算 増える空き家に対策急務
片田貴也2023年4月1日 10時00分
全国で空き家の増加が問題になっている。その要因の一つが、所有者が認知症になり、意思判断ができないため、売却や解体ができないことだ。民間の試算では、認知症の人が所有する住宅は2021年時点で221万戸あり、40年には280万戸になると見込まれる。
第一生命経済研究所は21年、総務省の統計や年齢別の認知症有病率などを元に、認知症の人が所有する住宅の試算を公表した。18年時点で210万戸、21年時点で221万戸あると推計。40年時点では280万戸まで増加すると試算した。
同研究所の星野卓也主任エコノミストは「個人で情報収集して対策をするのは限界がある。行政や業界団体が、親が認知症になる前の対策として家族信託や任意後見制度などの制度を周知や進める必要がある」と指摘する。
5年ごとの総務省の住宅・土地統計調査(2018年)によると、空き家は全国に849万戸あり、住宅の総数に占める割合は13・6%。野村総合研究所の予測では、空き家の取り壊しが進まない場合、38年にはさらに31・5%に上昇する。
特に、持ち家率が高い団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる25年以降、急増する恐れがある。厚生労働省の推計では、高齢者の認知症患者は、12年は462万人だったが25年には約700万人と、高齢者の約5人に1人になると見込まれる。
空き家問題に詳しい明治大の野澤千絵教授(都市計画)は「今後、所有者が認知症になるケースが増えると、処分困難な空き家も増える可能性がある。団塊世代の高齢化が、空き家問題にも大きく影響してくる」と警鐘を鳴らす。